今月のトピック バックナンバー

子供のスノーボード

11月になりました。もう来月末にはウインターシーズン突入です。そんな時期なので今月は子供のスノーボードのについて書いてみようと思います。

今回、全日本スキー連盟(SAJ)がスノーボード教程を改定するにあたり、少しだけお手伝いさせていただきました。冊子の『Teaching Kids』という項目内、子供のスノーボード指導についての部分です。

近年、ウインタースポーツで子供がスノーボードをすることが多くなっています。そのような中インストラクターも様々な趣向を凝らし、子供たちにスノーボードの楽しさを伝え、技術的にも向上させるレッスンを工夫しています。

そもそもスノーボードは子供たちのボディーセンスを向上させるツールとしてはとても効果の見込める種目であると思います。教程にも記述していますが、子供の成長は年齢によってそれぞれ特徴が異なります。そのことを念頭に置き指導していく事で、とても大きな成長を期待することができます。実は、スノーボード以外の種目にも共通していえることで、多種多様のトレーニングを経験させコーディネーション能力を目覚めさせることができます。このコーディネーション能力は頭と体を結び付ける能力でスポーツ全般に影響があるばかりでなく、日常生活の中で辛抱強さや集中力を高めていく事にもつながります。さらに、成長段階に適した内容でトレーニングをしていく事で身長を伸ばすことも可能です。

以前このトピックでもコーディネーション能力について書いたこともありますが(コーディネーション能力についての記事はこちら)、今回は特に子供限定で進めてみます。

コーディネーショントレーニングとは

運動神経を向上させるための能力を7つの要素に分類し、身体に様々な刺激を与えるトレーニングです。 ここでの運動神経とは、視覚・聴覚などの感覚器を通し脳に入ってきた情報を処理し、正確に身体の各部に指令をだす、いわば脳と身体の間で行うコミュニケーション能力を指します。運動神経を向上させるトレーニングはスノーボードに欠かすことができないばかりではなく、歩行中の転倒、自動車の運転、突然の危険回避など日常生活においてもとても重要です。

コーディネーション能力は12歳前後でほぼ完成します。この時期までにトレーンングを経験することで大人になってからの運動神経の良し悪しが決まります。子供の時期を逃してしまうと大人になってからの向上は非常に難しくなります。

反対にコーディネーショントレーニングで得られた能力は時間が経っても(大人になっても)衰えません。脳を活性化させるので、子供の集中力、粘り強さ、発想力等も身につきます。この事からゴールデンエイジにおけるコーディネーショントレーニングは日常生活活動や様々な運動において重要なトレーニングだと言えます。

コーディネーション能力を向上

子供のトレーニングは初めから難しい課題ではなく、動きのレベルに合わせて徐々にレベルアップさせていきます。効果を最大限にするためには様々なバリエーションを行う事が重要です。同じものを繰り返し行うのではなく、新たな課題を次々に与えていく事により、多種にわたる刺激が脳から身体への様々な反応を生み出すことになりトレーニング効果が期待できます。トレーニングを効率よく行うためには以下の事がポイントになります。

1 両側性
左右・前後・上下など両側を行う
2 複合性
身体のいくつかの動きを組み併せて行う。(脚と上肢、右手と左手など)
3 対応性
条件の変化
4 不規則
ルーティン化せずフェイントやサインを変えて行う
5 変化度
課題の難易度を少しずつ上げて行う

コーディネーション7つの能力とスノーボーディングでのコーディネーショントレーニング

リズム能力動きのリズムコントロールしを行い、タイミングを掴む能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

ボードを滑らせる、止めるなどのタイミングやターンリズムをつくる

バランス能力 空間や移動中での身体バランスの維持、崩れたバランスを素早く回復する能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

滑走時のポジション変化やボード上での重心移動さらにリカバリーなどを可能にする

変換能力突然の外力や状況変化に対して動作を切り替える能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

斜度変化、雪質の変化、地形の変化などにに対する適応を可能にする

反応能力外部情報にあわせて目的にあった動作を素早く行う能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

規制されたコースやトゥリーランなどのライディングを可能にする

連結能力個々の部分的な動作を全体的な動作に同調させる能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

走時の一連の動きをスムースに行うなう

定位能力状況を把握し自分自身の身体の位置を空間的・時間的に対応させる能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

ジャンプ・ホップなどの着地や・スイッチ時における安定した身体対応を可能にする

識別能力手や足または道具操作を精密に行う能力

【具体的なスノーボーディング場面 】

ボード特性を理解し重心移動の加減、エッジング強弱、スピードコントロールを可能にする

表記したコーディネーション能力をそれぞれ考慮して、多種多様なトレーニングパターンをインストラクターは考え提供していく必要があります。さらに、年代別の特徴を加味し細かい指導を心がけていく必要があります。

年代別の特徴

3歳~小学校低学年の特性

プレゴールデンエイジ世代と言われ、神経系の発達が顕著な世代です。

様々な刺激や、情報によって脳と身体を結び付ける神経細胞が特に発達します。体内に神経回路が次々と張りめぐらされていく時期です。反対に筋力、心肺機能、骨格はまだ未発達のため強度の強い運動や長時間にわたる運動は適しません

さらに、集中力が長時間持続しないため、同じ運動や刺激も適しません。反復回数を増やす学習よりも、様々な課題を与える事をメインにおき、常に飽きさせない事が重要になります。

小学校高学年の特性

この時期はゴールデンエイジと言われ、ほぼ神経系の成長が完成に近づき、様々な動作に対して素早い習得が可能な時期です。

この世代はプレゴールデンエイジに他種多様な運動刺激を経験した場合のみに大きな向上が期待できます。形体的にも少しずつ安定感が出てきている世代ではありますが、特徴としては新しい技術(動き)を経験させる時期であります。

中学生の特性

中学生の時期は、呼吸・循環器系・骨格が大きく発達します。そのため今まで経験した自身の感覚に差が生じ、運動動作にミスが起こることが多くなります。

この時期からは新しい技術を経験するよりも、徐々に集中力が向上するため運動時間を伸ばし、今まで経験した動きの反復をする期間です。骨格系の発達が顕著であるため強度な筋力トレーニングなどは傷害に繋がるとこともあるので、気を付けなければなりません

おわりに

それぞれの要素が関係性を持ちながら様々な運動が出来上がっていきます。

インストラクターはもとより、お父さんお母さんにおいてもコーディネーション能力を伸ばすポイントを考えながら、課題を与えることで子供たちの新たな能力を引き出す事が出来るでしょう。

ぜひ今年のウインターシーズンは子供たちにスノーボードの経験をさせてほしいと思います。

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