今月のトピック バックナンバー

コーチングと体罰

2月は元々、日数が少ないので早いのは当然ですが、あっという間に過ぎてしまいました。気が付けば桜が咲いたなんて事になっているんでしょうね。

さて、今月のトピックですが、かなり大きな問題になっている指導者とプレーヤー、指導と体罰について私の意見を書いてみました。もちろん正解は何かなどと言うつもりはないのですが、色々な意見があるうちの一つと思って読んでいただければ良いかと思います。

先日のニュースの出来事

まず、事の発端は大阪桜ノ宮高校バスケット部の男子生徒が自殺を図ったことから始まりました。キャプテンだった彼は指導者(教員)からの体罰に耐えられずに自ら命を絶ってしまいました。

私の学生時代は中・高・大学までかなり叩かれました。鼓膜が破れることなどはあたりまえでした。それも自分なりに納得していました。そんな時代だったので私も教員時代に生徒を叩いたことが何度もありました。それも今となっては考えられないことですが。

今の時代、体罰(身体への暴力・精神的な暴力)はあってはならない事です。ですが、実際にはかなりの学校で行われているようです。特に強豪の中学・高校では指導者が絶対的支配の中で成り立っていることも多く、それがあたりまえのようになっています。この体質はどこから出てきているのでしょう?

日本の学生スポーツはそれぞれの世代で結果を出そうとします。中学で全国大会出場。高校で選抜・インターハイ出場、各全国大会優勝。 高校野球でいえば春の甲子園、夏の甲子園、国体への出場など・・・。ここでよい成績を残せば進学、就職までがほぼ確定する。プロ野球選手になれば契約金や報奨金?から監督にかなりの額の金品が支払われる(これは聞いた話です)野球は高校生なのに高体連ではなく高野連に所属している。野球だけなぜ?と思います。他の競技ではありえない全ての試合がテレビ中継されます。ここでも大人の事情が見え隠れしています。野球で例を出しましたが、他の競技でも同じようなことは言えると思います。良い成績を残すことで進路が約束されたり、学校が有名になることで良い選手が集まるなどの理由が存在しているわけです。

色々な意見はあると思いますが、指導者がチームを強くする目的で体罰を与えると言うのは、まんざらウソではないようです。短い学生生活の実質2年間では、恐怖政治をして全てを従わせることで、成長段階にある子供たちの競技成績は上がるようです。色々なものに興味を持つ年代のプレーヤー達には競技以外のことは抑えつけて、従わせる方法が一番早い訳です。 ですが、『本来のスポーツの姿ではない・体罰で得たものは本当の強さじゃない』などと評論家達はテレビで言っています。

その通りではありますが、現場の指導者には結果を残したい、残そうという気持ちが強くあります。結局は学校の中で勝つためのプレーヤーを育てていくシステムが限界に来ているということではないでしょうか? アメリカなどのように学生時代は色々なスポーツを経験させ、子供たちがチョイスするための経験をつませるシステムにすれば問題は解決しそうです。現にアメリカではシーズンによって種目を変えています。野球がもの凄く上手なプレーヤーがいたとしても、その指導者はオフシーズン中に指導をすることはルール違反になりペナルティもあるようです。精神的にも肉体的にも未発達な子供たちが健全にスポーツに接していく事を目的にするならば、システムを変えるしかないでしょう。トッププレーヤーを目指すのであればクラブチームなどで専門的に行い、学校教育と勝つためのスポーツとを差別化する必要があるのではないでしょうか?

私が講師をしている学校の学生達にコーチとプレーヤーの体罰問題について意見を聞いたことがあります。驚いたことにほとんどの学生が『信頼関係があればある程度の体罰はあったほうが良い』という意見でした。でも私はそこに問題があると感じています。クラブ活動に入部してその中で過ごすことによって、ある程度の体罰があたり前と認識してしまっているのではないかと思います。入部した部活動の指導者が体罰を一切行わない指導者であれば、それがあたり前だと思うはずです。言い方をかえれば入部後、少しずつ洗脳されてしまうのではないかと思います。自らモチベーションを高められ、しっかりとした目的意識を持っていればパフォーマンス向上に体罰は全く必要のないものです。要するに大人であればまず体罰はありえない事です。中高生の場合、競技指導と同時に社会性や人間性を指導していくことが指導者としての大事なファクターである訳です。

話を元に戻すと桜ノ宮高校の男子学生は自殺するまでの間に担任教員、部活動の仲間、そして両親は何をしていたのか? 人間性・社会性が全く成長していないのではないでしょうか?担任教員は毎日何を見ていたのか、どのような指導をしていたのか。部活の仲間達は毎日何を話していたのか?一番の疑問は両親は事が起こった後、なぜマスコミに出て意見をしているのか?大阪府内で有力校でもある学校を選んで入学したということは、部活の状況や指導者の指導法については知っていたはずです。仮に知らなかったとしても2年間の間に知りえたことであるし、子供とのコミュニケーションが取れていれば起きなかった事件ではないのかなと思います。それをマスコミが騒ぎ始めてから出て来て、指導者責任を追及したり、学校側を批判したり全く解せません。殴られて自殺する精神的な弱さは親の責任ではないのか、とすら思ってしまいました。そして、マスコミも絶対に体罰があることを知っていたはずです。それを自殺者が出たことによって今まで無視していたことを大きく報道する体質にも問題はあると思います。最近では少し落ち着いてしまった事件ではありますが、これからのスポーツ界・学生クラブ活動においてはとても大きな問題になるのではないでしょうか。

体育指導

今回は私の勝手な意見を掲載してしまいましたが、今後どのような動きになるのかは注目していきたいと思います。

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